初めての水耕栽培
土を使わず専用の液体肥料だけで栽培することができる水耕栽培は、室内やベランダなどの限られた小さなスペースでも栽培を楽しむ事ができる、近年人気の家庭菜園の一つです。
水耕栽培とは
水耕栽培は、液体肥料を用いて行う栽培方法の一つです。
私自身室内での水耕栽培を3年以上しています。
部屋の間取りは、日当たりはさほど良くはありませんでしたが、東南側の窓辺と、西側の窓辺を利用してラディッシュやリーフレタス、小カブ、ミズナ、春菊、シソ・青菜など、真冬を除いて多くの野菜を栽培していました。
日当たりの悪い部屋でも植物LEDライトを併用することで結実野菜を収穫することもできます。
水耕栽培の利点
葉物野菜なら絶対お得
リーフレタスやシソ、ミズナ、小カブなら専用液肥と明るい窓辺があれば本当に良く育ちます。
葉物野菜は食べたい分だけ窓辺で摘み取れば良いので、買い物の必要も保存の手間もありません。
初めての水耕栽培なら、是非チャレンジしていただきたいのは、リーフレタスです。栽培については後ほどご紹介します。
害虫被害に遭いにくい
土を使わない水耕栽培の最も大きな利点は、なんといっても害虫被害に遭わないという事です。
実は害虫は、土によって来ると言われています。そのため室内での液肥栽培では、基本的には虫が付く事はありません。
また、畑などで行う土耕栽培のように、せっかくまいた種を鳥に食べられる事もありません。
ただ、ベランダでビニールハウスを用いてピーマンを栽培した時には、アブラムシが付きました。
ベランダでの水耕栽培でもビニールハウスを使用しなければ害虫はほぼつきませんでした。
病気になりにくい
植物が病気になる原因には、水や肥料の与えすぎがありますが、水耕栽培ではその心配がありません。
水・肥料の与え過ぎがない
植物栽培では水や肥料は必ず必要になります。
一般に土耕栽培で問題になるのが水や肥料の与え過ぎや連作などです。
水や肥料は与え過ぎれば、根腐れや肥料やけなどを起こしますし、少なければ栄養不足で枯れてしまいます。
こうした弱った細胞ではウィルスや細菌、害虫の浸食を受けやすなるため、収穫ができなくなってしまうのです。
この点水耕栽培は、専用肥料を指定の水の量で希釈して、容器の中で根が浮遊している状態で栽培を行うので、根腐れや肥料焼けを起こすことはありません。
連作障害がない
連作は、同じ土(畑や同じ場所)を用いて、続けて(毎年)栽培する事を言います。
この様な栽培方法で問題になるのが連作障害で、ウィルスや細菌による障害が原因です。
ウィルスや細菌と言ったものは一定の環境にいつきます。
そのためある野菜を好むウィルスは別の野菜にはつかないという特徴があるのですが、ひとたび付着すると何年もその場所に住み着きます。
これは、ウィルスや細菌が、土の中の植物の根や、肥料を吸った土を養分にして繁殖を繰り返すためです。
例え、作物を収穫した後に苗を抜いたとしても、残存するちぎれた根や養分がある限り繁殖を繰り返して増殖し、土自体が脆弱になります。
こうした土地で翌年同じ野菜を作ると、それを好む増殖したウィルスや細菌によって、苗もまた脆弱になり収穫量が落ちたり、対策もむなしく病気になりもはや収穫もできなくなります。
その為、野菜栽培では連作障害を避ける為、輪作を行います。
輪作とは、それぞれの野菜を栽培するのに、一定期間他の野菜を組み入れ、土を浄化しながら栽培を継続する方法です。
輪作で開ける年限は、それぞれの野菜で決まっています。
土を使わない水耕栽培ではこうしたウィルスや細菌の心配がないので、当然連作障害もありません。
天候に影響を受けない
春になるとホームセンターには様々な苗が出回りますが、丹精込めて栽培した苗が、梅雨の日照不足で貧弱になることがあります。
また収穫目前の苗が台風被害に遭う、なんて事もしばしば。
その点水耕栽培は、室内栽培にうってつけの栽培方法なので、天候の影響を全く受けず、むしろ冷暖房によって一定の室温の中で栽培することができます。
曇りの日が続くなら(植物育成)LEDライトで補う事も可能です。
植物育成LEDライトについては、後ほど簡単にご紹介します。
水耕栽培の欠点
大きな野菜は不向き
環境にもよりますが、ナスやトマト、ピーマンなどいわゆる陽生植物などは、丈が大きくなります。
その分液肥もスペースも必要になりますので、室内にはあまり向かないでしょう。
初期費用がかかる場合がある
室内栽培では光さえ確保出来れば、必要な物は手作りする事もできますので、専用液肥だけを準備すれば低予算で始める事ができます。
ただ、栽培するのに充分な陽の光がない場合には、LEDライトで光を補う必要があります。
植物育成キット(LEDライトつき)のセットを購入
一方、必要なキットを購入してすぐに栽培を開始したいという方は、ある程度予算はかかります。
このような製品は日照を考慮した植物育成ライトが付いているので、20000円~50000円くらいと、価格が高くなります。
このようなキットは、インテリア性に優れたお洒落なものも多くあります。
これらのキットを用いる事で、西の窓辺でもミニトマトやラディッシュを上手に栽培する事ができるようになりました。
キットは購入しないまでも、不足する日照を補うのであれば、植物LEDライトを単体で購入する事もできます。
これらも5000円~15000円くらいしますが、ライトの強さによっては、育苗用(発芽用)にしかならない物もありますので購入時には注意が必要です。
詳細については、後日改めて記事を投稿致しますね。
植物が大きく育たない
植物は地中に根を張ることで木を支えます。根が大きく広がるほど茎や幹は大きくなり、花や実がしっかりと育ちます。
ですが、水耕栽培では根が水中に浮いている状態にあるため、土耕栽培ほど根が発達・生育することは難しく、収穫できる実も全体的には小ぶりなものや、数は少なくなります。
通常根は白いです。
大量に栽培できない
水耕栽培では、1つの容器に植えられる植物の数は6~8株くらいが適当です。
収穫する数を増やすなら、容器を増やして行く必要があります。
うどんこ病は多少発生
うどん粉病は、最も発生しやすい白いカビで梅雨入り前から9月頃迄繁殖します。ただ、水耕栽培なら甚大な被害になる事はありません。
うどん粉病は、湿度が高くなると植物に発生するカビで、うどん粉をまぶしたように白くなることからその名がつけられました。
5月から発生しはじめ9月頃まで見られ、外での栽培ではほとんどの植物で発生します。
葉などが密集すると風通しが悪くなるので、滴葉をするなどの対処法のほか、重曹や酢を希釈したスプレーを散布するといった対処法があります。
うどん粉病にかかっても実は食べられますが、葉の表面がカビで覆われる為、症状がひどくなると光合成が妨げられ、成育不良や食味低下に陥ります。
とは言え、この見た目から食べる方はあまりいないでしょう。
水耕栽培の始め方
お勧めの液肥は?
水耕栽培で使用する液肥には2種類のタイプがあります。
2種類の液体を水で希釈
これはA液とB液という2つの液体を混ぜて指定量の水で希釈するタイプです。
代表的なのはハイポニカで、価格が安く大容量があるので、私も当初はこれを使用していました。
栽培の中で液肥が減ったら、減った分だけ容器に足す事ができますが、藻などが発生しますので、汚れたらこまめに替えていきます。
希釈は水500:原液1。2Lのペットボトルに水を入れてから、それぞれの液を2mlずつ混ぜて作ります。私は何種類も野菜を作るので、ペットボトルに作り置きしていました。
1種類の液体を水で希釈
こちらは1種類の原液を水で希釈する物です。水耕栽培容器を多数使用するのであれば、手間がかからないこちらがおすすめです。
液肥の交換は通常2週間に1回行います。水を捨てたり、液肥を作ったりするのも、最初の内は負担がないかもしれませんが、忙しい中や時間の経過とともに飽きてくると、この液肥交換が結構な手間に感じるようになります。
私が水耕栽培を始めたころは液肥と言えばハイポニカ、と言われていましたが、最近では良い液体がそろっていますので、沢山栽培したい方は、一種類の液肥がおすすめです。
用意する容器は?
専用のキットもありますが、自分で一から作る事もできます。でただすぐに簡単に始めたいと言う方にはキットがお勧めです。
既製品の栽培キット
水耕栽培をするためのキットで、種まきトレーやピンセットは勿論、液肥や種までついていますので、購入後すぐに始められます。
キットには、ライト付きのものとライトなしの物があります。
室内栽培では、採光がどれくらいあるかで、栽培可能な植物が決まります。そのため、日当たりの悪い部屋ではライトはあった方が良いかもしれません。
ただ置いておくにもある程度場所を取りますので、長く使いたい方に向いているでしょう。
私が持っているのはLEDライト付きですが、これを使用したら、ラディッシュが丸く育つようになりました。
植物ライトには色々な形がありますので、自分の栽培スタイルに合ったものを選ぶとよいでしょう。
自作栽培キット
栽培キットは手作りすることもできます。
自作容器は自分好みにカスタマイズできるので、改良を重ね楽しみながらできるのでお勧めです。
ペットボトルの利用や百均で物をそろえられるのもうれしいですね。
ペットボトル容器
最も簡単な容器です。
2L、1L、500mlのペットボトルなどお好みのボトルを使用します。
下1/3と上1/3をカットして、上下を重ね、下の容器に液肥を入れて使用します。
自作容器(移植型)の作り方
ここでご紹介するのは、私が好んで使用している容器で、ポット移植型です。
水耕栽培では、根は常に液肥に浸かっていなければなりません。小さく短い内は浅い容器で育て、根が太く長くなったら深い容器へ移します。
液肥と育苗ポット以外は百均でそろいますので、参考になれば幸いです。
種まきから発芽までに必要な物
発芽・初根はスポンジ培地で行います。
- 種まきトレー(お菓子の空箱や卵の空パックが便利)
- スポンジ(種まき用)
- 水(液肥でなくてよい)
発芽後に必要な物
- 浅型と深型の容器を用意(同じシリーズの蓋つきがお勧め。百均で購入)
- ハサミやカッター(育苗ポットを植える為に蓋を丸くカットするため)
- 水耕栽培用ポット(大きさはいくつかあると便利。ネットで購入)
- ハイドロカルチャー(あってもなくても良い)
- 専用液肥(ポットへ移植後から使用。)
蓋には、育苗ポットがはまるようにカッターで穴を開けます。
この写真の育苗ポットは、葉野菜やラディッシュ、カブなどが向いています。
購入時の注意事項
ポット(スリット入り育苗ポット)以外は百均で購入できます。
容器の深さは2種類必要で、浅型は育苗用、深型は育成用です。
成長に合わせて深さを変えて液肥の消費量に合わせていきますので、容器は同じシリーズで、蓋を変えれば移植できるようにすると便利です。
ポットだけを抜いたり植えたりすると、根を痛める事があるのでお勧めできません。
初めての種まき(リーフレタス)
リーフレタスは半陰生植物のため、日中3~4時間の光が差し込む窓辺においておけば、順調に成長します。
植物は、必要な光の量で、陽生・半陰生・陰性植物に分けられます。
リーフレタスや、紫蘇などの半陰生植物は、午前中(3~5時間)だけの陽の光や、木漏れ日などの柔らかい日差しがあれば生育できます。
トマトやナスなどの陽生植物は、充分な日差しを受けて育ちます。
ミョウガや三つ葉などの陰性植物は、3時間未満の光や弱い光でも育つ事ができる植物です。
種まき
スポンジを2㎝角にカットし、中央に深さ1㎝ほどの切れ込みを入れ、たっぷりと水に浸した後で種を二粒ピンセットなどで植えます。
二つとも発芽するなら良い方を育てるようにします。
直射日光の当たらない暗く涼しい場所に置いておきます。早ければ2日後には芽が出始め、1週間前後で双葉がそろいます。
この時2~3日おきに霧吹きで水を与えスポンジを乾燥させないようにします。
双葉が出て、スポンジから根が長く伸びてきたら、スポンジを育苗ポットへ移し、液肥をはった浅型容器にポットを置きます。
まだ根が短いため、蓋へのセットはせず、確実に液肥にスポンジに浸かる状態にして乾燥させないようにします。
液肥は、1~2週間の交換になりますが、使用する薬品の説明書に従いましょう。また、5月頃は室内の温度があがり、液肥の蒸発もするので液肥が最低水位を下回らないように注意します。
水がなくなれば、アッと言う間に枯れてしまいます。こまめに観察できない方は、大きい容器がお勧め。
浅型容器へ移植
根が長く伸び、葉が成長してきたら、穴を開けた容器の蓋にセットをしていきます。このころは根がかなり長くなっているので、容器にセットをしても乾燥することはありません。
日にちを追って、成長が進んだら深型容器に移し替えて同じように栽培をしていきます。
収穫
リーフレタスは下から一枚ずつ摘める(摘葉)ので、とても便利ですし、一株で長く葉が取れますから重宝します。
真夏になると徒長し菜の花が付きますが、徒長すると味が落ちるのでそうなる前に収穫を終えるようにします。
リーフレタスなどは簡単なので是非挑戦してみてくださいね。
徒長など、色々注意事項はありますが、それはまた今度別の記事でご紹介します。
最後までお付き合い下さりありがとございました。
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