水耕栽培とは
水耕栽培とは、土を使わず、専用の液肥と光だけで植物を育成する、室内栽培に適した栽培方法の事を言います。
室内栽培と言うと、作れる植物は限られてくるのではないかとも思いますが、条件が整っていれば以外と色々な植物を栽培できます。
私はもっぱら野菜づくりをし、春・秋にはささやかながらも収穫を楽しんでいます。
今回は、水耕栽培初心者の方にも簡単に作れるお勧めお野菜6選をご紹介します。
水耕栽培について詳しく知りたい方は、初めての水耕栽培~水耕栽培とは?記事をご覧ください。
水耕栽培に適した野菜
初めて種まきをする方なら、春播きよりも秋播き、と言いますが、これは、春には青虫などの害虫が多発する為、害虫の少ない秋播きが良いとされているからです。
この点、室内での水耕栽培では害虫が付かないので、春まき・秋播きの2回にわたってほぼ確実に収穫する事ができます。
とは言え、大きな畑で降りそそぐ太陽を浴びて栽培する土耕栽培に比べれば、水耕(室内)栽培では全体的に株は小さくなるのが実際のところです。
ですが、ニトマトなども上手に栽培すれば多くの実をつける事ができ、窓辺に置いておけば、インテリアとしても楽しめます。
また室内での栽培だから、食べたいときに食べたい分だけ摘めるので、買い物の手間もなく毎日新鮮なお野菜を収穫できます。
そのような点から、菜類・葉物野菜はお勧めです。特に以下に挙げる野菜類は比較的自然光で栽培が可能なので、初心者の方に向いています。
私基準ですが、1位から6位までランク付けしてみました。特に1位のリーフレタスと2位の小カブ、3位の紫蘇は初心者さんにお勧めです。
- リーフレタス
- 小カブ
- 紫蘇
- ミズナ
- ラディッシュ※植物育成ライトを使用
- ミニトマト(レジナ)
それぞれの栽培方法を見る前に、室内栽培の条件を確認しましょう。
室内栽培の条件
植物を栽培する為に必要な条件は、水・光・空気・温度・養分の5つです。
水耕栽培を継続し失敗を繰り返しながらも収穫に至った私から言えるのは、この内最も環境を整えなければならないのは、水・光(強さ・長さ)・温度かと思います。
養分は液肥で十分補えますが、日照条件は室内温度や水分の蒸散にも影響するので、それぞれの野菜の特性に注目して、環境に適合した物を選ぶ必要があります。
水分
種まきから収穫にいたるまで、随時必要な水ですが、水耕栽培において最初に注意するのは、種まき時の水分過多です。
水耕栽培での種まきは、給水させたスポンジ培地に切り込みを入れ、そこに種を植えるのが通常ですが、この時に水分が多すぎると、細胞は水膨れ状態になり、徒長の原因になります。
徒長とは
徒長は、茎が細く長くなった状態を言い、細胞壁が薄くなる為に病気や害虫の浸食被害に遭いやすくなると言われています。
徒長は、水分過多だけでも日照不足でも起こります。これは、植物が光を求めて間延びをするためです。
日照条件
栽培に必要な光は、量(強さ)と長さです。
光の長さについては厳密には日照時間(明期)ではなく、夜の長さ(暗期)です。
光の単位
光を表す単位には、光源が放つ光の量を表すルーメンと、光源から照らされた場所の明るさを表すルクスがあります。
例えば、部屋の電気(照明器具)をつけて机で本を読んでいる場合、部屋の照明器具の明るさがルーメンで、本を読んでいる手元の明るさがルクスです。
植物栽培では光はルクスで考えます。
一般家庭の電球で言うワット数ですが、これは電球の消費電力の事で、光の明るさを表すものではありません。
ただ実際のところはワット数の高さに比例して電球は明るくなります。
光補償点と光飽和点
植物が光合成をおこなう為には、最低限必要な光の量というのがあり、これを光補償点と言います。
他方で、光の強さがある量になるとそれ以上光合成量は増えなくなるという量があり、これを光飽和点と言います。
実際には光補償点を軽度上回る程度の光では足りませんので、光飽和点を参考に光を取り入れた方が良いでしょう。
野菜の光飽和点一覧表
野菜の種類 | 光飽和点(KLX) | 光補償点(KLX) |
---|---|---|
チンゲンサイ | 85 | 不明 |
サツマイモ | 80 | 35~40 |
スイカ | 80 | 35~40 |
メロン | 80 | 3 |
トマト | 70 | 30 |
オクラ | 70 | 不明 |
アスパラ | 50 | 不明 |
キュウリ | 50 | 5 |
ブドウ | 48 | 300LX |
イネ | 45 | 1 |
カボチャ | 45 | 1.5~2 |
セルリー | 45 | 不明 |
イチジク | 40 | 1 |
エンドウ | 40 | 2 |
キャベツ | 40 | 2~5 |
ナシ(幸水) | 40 | 300LX |
ナス | 40 | 2~5 |
ハクサイ | 40 | 20 |
モモ(白鳳) | 40 | 200LX |
ピーマン | 35 | 1.5~2 |
トウガラシ | 30 | 1.5~2 |
カブ | 30~40 | 不明 |
サトイモ | 30 | 不明 |
インゲン | 25 | 1.5 |
エダマメ(ダイズ) | 25 | 2.5 |
ネギ | 25 | 2.5 |
シュンギク | 25~40 | 不明 |
コマツナ | 25 | 1.5~2 |
ホウレンソウ | 25 | 1.5~2 |
レタス | 25 | 1.5~2 |
イチゴ | 20 | 2~3 |
ミツバ | 20 | 1~3 |
セリ | 20 | 1~2 |
ミョウガ | 20 | 1~2 |
紫蘇 | 20~30 | 1~2 |
ニラ | 20~30 | 1~2 |
シクラメン | 15 | |
シンビジウム | 10 | |
プリムラ・オブコニカ | 10 | |
プリムラ・マラコイデス | 10 | |
セントポーリア | 8 | |
アザレア | 5 |
※光飽和点は、これ以上強くしても光合成量は増えないという光の強さです(1KLX=1000LX)。栽培では光飽和点を参考にしましょう。
陰性植物と陽性植物と半陰生植物とは
家庭菜園で分かりやすい日照条件での分類は以下になります。
- 陽性 植物:太陽の光を十分に浴びた環境で育つ。トマト・ナス・トウガラシ・ピーマン・エンドウ・ミニ白菜
- 半陰性植物:半日あるいは木漏れ日やレースのカーテン越しで育つ。イチゴ・ホウレンソウ・コマツナ・カブ・リーフレタス・シュンギク
- 陰生 植物:直射日光の当たらない日陰で育つ。ミツバ・セリ・ミョウガ・クレソン・ニラ
冒頭でお勧めした6種は、半陰性植物が多く、強い光を必要とせず、東から東南寄りの窓辺の自然光(柔らかい光)があれば十分栽培できます。
いわゆる西日だけでは室内栽培は難しいかもしれません。
私は西側の窓辺で栽培をしていた時はLEDライトを併用して栽培をしていました。そこで良く育ったのが、ラディッシュでした。
長日植物と短日植物(光周性)
植物には、それぞれ必要な光の量があり、それは強さだけでなく長さも関係しています。
通常、植物が花芽を作る(花芽形成)ためには、暗期(光が当たらない時間)の長さが条件になります。
夜の長さが一定時間より長ければ花芽を作るのが短日植物であり、一定時間より短ければ花芽を作るのが長日植物であって、この限界の長さを限界暗期と言います。
他方で、暗期の長さに関係なく花芽形成する植物もあり、これを中性植物といます。
- 短日植物:夜が長いと花芽形成する
- 長日植物:夜が短いと花芽形成する
- 中生植物:夜の長さに左右されないで花芽形成する
短日植物の代表は、イネ、アサガオ、キク、紫蘇です。
長日植物の代表は、大根、ホウレンソウです。
中生植物では、トマト、キュウリ、エンドウなどです
温度条件
発芽適温と生育適温
植物栽培での温度管理は、発芽をするのに適した発芽適温と、生育するのに適した生育適温があります。
通常、種の袋には土耕栽培用に「種のまき時」と「収穫時期」として、簡易カレンダーがプリントされています。
これは水耕栽培でも適応しますので、種まきはこれに従いましょう。
※花芽形成と温度については、秋に撒いて越冬し春に開花する場合には、長期間の低温条件で生殖成長へ移行するものがあります。
発芽適温は、高すぎても低すぎても発芽しませんが、大体19~23℃くらいの気温なら春まき・秋播きのどちらの種も発芽します。
室内栽培で注意したいのは生育適温です。
不適切な栽培環境での注意
注意1:高温管理によるトウ立ち
生育適温では、せっかく発芽しても低すぎると成長出来ません。また、せっかく苗が育っても気温が高すぎるとトウ立ちしやすくなります。
トウ立ちとは、花芽分化が進んで開花した状態を言い、菜の花やネギ坊主がこれに当たります。
葉や茎を食する野菜はトウが経つ前に収穫し、その柔らかい食感や甘味を楽しみます。
ですが、トウが経った植物は、新しい葉ができず、残った葉は肥厚して固くなり、茎は繊維が残り、風味も落ちてしまう為食用には向かないのです。
植物は日々成長を続ける為、一定期間を過ぎると花芽分化を起こすのは当然なのですが、温かい室温では、成長が促進する為トウ立ちしやすくなるのです。
トウ立ちは高温・長日で30度以上になると起こるとも言われています。
注意2:早すぎる時期の花芽形成は老化苗
早すぎる時期の花芽分化の要因は、高い気温ばかりではなく、日長の長さ(又は暗期の長さ)でも引き起こされます。
内容を入力してください。トウ立ちは高温・長日で30度以上になると起こるとも言われています。
例えば、ホームセンターに苗が出回る3~4月ごろ、良く見ると他の苗よりも早く花をつけているものがあります。
一見すると成長が良い様にも思うのですが、背の低い苗に花が咲いている場合、これはお店の照明が長く当たっているなどして花芽分化が早まった可能性があり、定植しても根が付きにくい為、実をつける事ができません。
その為畑に苗を植え替える時はつぼみが付く前に、と言われています。
はい。ですが老化苗は、必ずしも長く光が当たるから起こるのではなく、長い照明で花芽分化するのは、それが長日植物だからです。
例えば紫蘇は(半)陰性植物で比較的弱い光でも成長します。ですが、短日植物でもある為、夜が長くなる時期に花芽分化を起こします。
花芽分化をすると葉が固くなり味が落ちるので、わざと花芽形成を遅らせる為に夜間は明かりをつけておくという栽培方法も採られています。
種まきからのお勧め野菜6選と注意点
- リーフレタス
- 小カブ
- 紫蘇
- ミズナ
- ラディッシュ※植物育成キット(ライト付き)を使用
- ミニトマト(レジナ)※植物育成ライトを使用
水耕栽培の醍醐味は容器づくりもあると思うのですが、改良に改良を重ねた自作容器でうまく栽培できると本当にうれしい物です。
私自身、初めての栽培はペットボトル栽培でしたが、お気に入りの容器を作ってみるのも良いでしょう。
容器作りはこちらの記事でもご紹介しています。
1位:リーフレタス
最も簡単で、最も手間がいらず、長く収穫できる野菜でもあるので1位にしました。
お勧めポイントと注意点
- 発芽に失敗しない(発芽率85% 播種後2~3日で発芽)
- 東南の自然光が入る窓辺で栽培(半陰生植物)
- 比較的株が大きく育つ
- 容器は深すぎない方が良い
半陰生植物のリーフレタスは、水耕栽培でも根(株)が良く育ちます。
植物は、株が大きければ大きいほど、茎は頑丈で葉も茂るので根が良く育つような容器がお勧めですが、根の長さは意外と短く横に太くなるので、液肥を入れる容器はあまり深すぎないものを使用しましょう。
成長が良ければ液肥の減りも早いので、二株で栽培するよりも一株で栽培する方が良いかも知れません。
小カブ
- 発芽率:85%以上
- 春まき・秋播き
- 半陰生植物
- 成長を妨げない容器選びを
小カブにしろ、ラディッシュにしろ、実は容器の上になりますので、ある程度容器は大きい物を選んだ方が良いでしょう。
思った以上に大きく育てることができたので、2位にしました。
3位:紫蘇
データが破損したため画像はないのですが、とても良く育ちますので是非栽培してみてください。
- 発芽率:85%以上
- 春まき・秋播き
- 陰生植物
- 株は大きく、根が長くなるので2Lペットボトルでの栽培が適している
1位~3位はほぼ手間いらずですが、紫蘇を3位にした理由はあまりに簡単すぎて物足りない為、2位ではなく3位にしました。
こちらは種から撒くのも良いのですが、挿し木でも成長して長く収穫できるので、是非挿し木でも楽しんでいただきたい植物です。
4位:ミズナ
画像なし
- 発芽率:80%以上
- 春まき・秋播き
- 半陰生植物
- 株を大きくするためには、根の成長を妨げないような容器に。
発芽率は80%ですが、水耕栽培ではあまり失敗しなかったです。ただ株があまり大きく育たなかったので、4位にしました。
まく種を多くして株の本数を増やして栽培しても良いかもしれませんね。
5位:ラディッシュ(はつかダイコン)
陽生植物でランクインさせた唯一の植物です。
陽生植物は、太陽の光が大好きなのである程度日照条件が良くなければ育ちません。
ですが、西側の窓辺でも植物育成キット(市販のセット)を用いて栽培したところ、初めて丸く育てる事が出来ました。
費用などを考慮して5位にしましたが、こちらも栽培をしたい一品です。
はつか大根は、20日で収穫できることから名づけられた植物でしたが、実際には40日近く栽培していました。
はつか大根にも種類があり、丸くなるものと長い物があります。
6位:ミニトマト(レジナ)
ミニトマトは半陰生植物なので、室内栽培でも可能なのですが、普通のミニトマトは丈が高いので、水耕栽培では支柱を立てることができず、倒れてしまいます。
この点、レジナと言うミニトマトは、背丈の低いトマトなので、水耕栽培(室内)に最適です。
- 発芽率:80~90%以上
- 春まき・秋播き
- 半陰生植物
- 栄養過多で徒長苗になるので、丈の長さが気になる場合は摘芯を。うどん粉病の予防には摘葉を。
こちらは、植物育成ライトだけ購入し西側の窓辺で栽培したところ、思った以上に実がなりました。
摘芯・摘葉とは
摘芯は、植物の茎の先端にある頂芽を摘む事で、その高さを調節する事ができます。通常先端の成長を止める事でそれより下の脇芽を促進させるために行います。
摘葉は、余計な葉に栄養が行くよりも花や実に栄養を行き渡らせより大きな実を栽培する為に育苗期間中から適宜行います。
トマトやナスは窒素過多により葉や茎ばかりが茂りやすい植物で、これをつるボケと言います。水耕栽培では、基本的には液肥濃度を自己で調節しないで、説明書に従った方法で使用します。
ここでご紹介した野菜以外でも色々試してみると良いと思います。
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